D.Y.F.Cオンラインアカデミー NIPPONぐるり地形学
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NIPPONぐるり地形学

第1回目:東京湾

第1回目:東京湾

東京湾がどこからどこまでか知っているだろうか。神奈川県三浦市の剱崎という岬と千葉県館山市の洲崎という岬を結んだ線の内 側の湾のことだ。そして神奈川県の観音崎と千葉県の富津岬を結んだ線の内側を内湾、外側を外湾と呼ぶ。内湾と外湾を隔てる観音崎と富津岬の間は、その距離わずか6キロメートル。そのため外洋から内湾への水の流入が少なく、内湾の潮の流れは穏やかだ。内湾にはさまざまな河川が注ぎ込んでおり、川が運んだ栄養分が東京湾の豊かな生態系を育んでいる。また外湾には深い海溝があり、内湾と外湾では地形も環境も大きく異なっている。

地形の変遷

第1回目:東京湾

現在の東京湾の面積は約1380平方キロメートル。しかし、時をさかのぼると東京湾の面積は今よりもっと広大だっ た 。日本列島のほとんどが海の底にあった時代から氷期・間氷期によって陸地の隆起と沈下を繰り返し、12万年前の間氷期を迎えて気候が温暖となると、海面が上昇。現在の関東地方一帯は海となった。この時期のこの一帯の海は、現在、地形学的に「古東京湾」と呼ばれている。3〜2万年前になると、再び氷期が訪れる。厳しい寒さで海面が下がり徐々に陸化していく。そして氷期が終わり、再び海面が上昇。こうして、約6000年前には、海が現在の埼玉県北部から群馬県内部辺りまで入り込んだ状態になった。この時代の内陸まで入り込んだ海は地形学的に「奥東京湾」と呼ばれる。

東京湾に注ぐ川

第1回目:東京湾

東京湾は利根川、荒川などの大河川から運ばれる土砂と海水面の浸水などにより、その姿を大きく変化させてきた。分水界(異なる水系の境界線。分水嶺とも言う)を見ると東京湾に注ぐ川の流域には東京都、千葉県、神奈川県、埼玉県のほか、茨城県、山梨県の一部も含まれる。東京湾に流入する主な河川としては多摩川水系、荒川水系、鶴見川水系、利根川水系があり、自然豊かな上流域から川を通って流れ込んだ栄養分は、東京湾の特異な生態系を作ることに役立っている。

東京湾の深さと釣り対象魚

第1回目:東京湾

東京湾は浅い海で、特に湾の奥側は水深20メートルにも満たない海域が広がる。外洋の水との混合が少ない内湾では得意な生態系が育まれ、よく釣れる魚としてはクロダイ、カサゴ、シロギス、ハゼ、スズキなどがある。また、内湾が浅い海なのに対して外湾は急激に深くなっているのが特徴。豊富なプランクトンを求めて外湾にはさまざまな回遊魚が集まる。ブリやタチウオ、アンコウやサワラなど、外湾では大物狙いの釣りを楽しむ人も多い。
※「深さの目安」はおおよそ数値以内の水深を意味します。

希少魚も生息する東京海底谷

第1回目:東京湾

東京湾外湾は水深が急激に深くなり、海底には巨大な谷地形が広がる。この地形を「東京海底谷(かいていこく)」と呼ぶ。水深500メートルを優に超えるところも多く、東京湾から東に伸びて相模トラフと呼ばれる海溝に合流する。東京海底谷はミツクリザメなど世界的に希少な深海魚が生息することでも有名で、生物学的にも地形学的にも国内外の研究者から注目されている。

【参考資料】
海上保安庁「東京湾の海底をのぞいてみよう」「海底地形図」、
環境省「東京湾及びその流域概要」、国土交通省「国土数値情報」、国土交通省関東地方整備局資料、
「東京湾の地形・地質と水」貝塚爽平 編、葛西臨海たんけん隊 東京湾の生きもの「Fact Sheet」
Infographics by HIROKI MASUDA © GLOBERIDE