D.Y.F.Cオンラインアカデミー NIPPONぐるり地形学
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NIPPONぐるり地形学

第3回目:富山湾

富山湾*富山湾側から陸地を臨む

日本海側の中央に位置する富山湾。西側を能登半島に囲まれ北東方向に口を開けたような形状の内海であり、太平洋側の駿河湾、 相模湾と並ぶ日本を代表する深い湾でもある。富山湾は立山連峰をはじめとする標高3000メートル級の北アルプスから水深1000メートルを超える海底に一気に連なる地形構造で、岸近くから急に深くなっているのが特徴。海底は深い谷(海底谷)が広がっていて、海の青さが濃い藍色に見えることから「藍瓶(あいがめ)」と呼ばれている。この世界的にも稀な地形である富山湾には、シロエビやベニズワイガニなどたくさんの生きものが棲息。日本海の「天然の生簀(いけす)」とも呼ばれている。

海流と7大河川

富山湾

富山湾には、暖流である対馬海流の一部が能登半島に沿って入ってくる。このため、暖流系の魚が海流に乗って富山湾にやって来るのだ。200〜300メートルの厚みで流れる対馬海流の下には日本海固有水(海洋深層水)が存在し、低温ながら栄養が豊富。冷水系の魚が多く棲んでいる。つまり富山湾は暖流系と冷水系の両方の魚が棲息する湾であり、日本海に分布する約800種の魚のうち約500種が富山湾に棲息しているとも言われている。

富山湾

富山湾に多彩な魚種が棲息する理由には、7大河川の存在もある。北アルプスの山の雪が雪解け水となり、森の栄養分が河川を通って富山湾に流れ出しているのだ。
海岸近くの湾の表層には、河川から流れ出た水の影響で、塩分濃度が低くなった沿岸表層水が分布している。

富山湾3層構造の海水

富山湾

3層構造となっている富山湾の海水。表層は塩分濃度の低い「沿岸表層水」、その下層から水深200~300メートル付近までが対馬海流の「対馬暖流系水」、そして水深300メートル以深には低温の「日本海固有水(海洋深層水)」が流れている。そして富山湾には、森の豊富な栄養分を含んだ淡水が海底から湧き出している「海底湧水」の存在も明らかに。
富山湾は湾に迫る山々と湾の水深が高低差4000メートルという世界的にも類を見ないダイナミックな地形であり、3層構造の海水や海底湧水などの要素も加わり、多様な生物を育む、実に豊潤な海を形作っているのだ。

富山湾の釣り対象⿂

富山湾

「富山県のさかな」として平成8年に富山県が選定した魚は、ブリ、白エビ、ホタルイカの3種。このうち釣魚として人気なのは、やはりブリだ。ブリは春に南の海で産卵を終えた後に北海道まで北上し、秋ごろからエサを求めて南下。脂ののったブリが富山湾にやってくる。富山湾中心部の氷見(ひみ)市近海で冬場に水揚げ、または釣れた寒ブリは「ひみ寒ぶり」と呼ばれ、脂ののり抜群で釣り人には大人気。富山湾は一年を通して魚種が豊富なため、季節ごとにさまざまな釣りが楽しめる。

【参考】
海上保安庁 海洋情報部、富山県ホームページ、富山県観光公式サイト「とやま観光ナビ」、富山県深層水協議会ホームページ、富山県漁業協同組合連合会ホームページ、日本海学推進機構「キッズ日本海学」、富山大学理学部ホームページ、日本近海海底地形誌(東京大学出版会)、DAIWA「釣魚図鑑」
Infographics by HIROKI MASUDA © GLOBERIDE