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第6回目:四万十川

四万十川

日本最後の清流とも呼ばれる四万十川(しまんとがわ)。全長は約196キロメートル。上流は比較的直線的な急流で、中流は蛇行(だこう)を繰り返し、下流はゆったりとした流れとなる。
四万十川は上流の一部を除き勾配が緩やかなこともあり、海水魚が中流域まで遡上(そじょう)することもあるのだとか。
また、四万十川には150種を超える魚が棲息しているとも言われ、豊かな生態系が育まれている。例えば上流域ではアマゴ、中流域ではアユ、下流域ではコイなどが有名。海水の影響を受ける気水域では、他の河川ではほとんど見られない幻の巨大魚、アカメも棲息している。

西側に流れを変えた理由とは

四万十川

四万十川の源流域は、四国中央部を東西に貫く「四国山地」の南面に位置する不入山(いらずやま)にある。四万十川の流れは源流から南下し太平洋に向かっているが、源流から120キロメートルあたりで急に西へと流れを変える。しばらく西に向かい、そしてまた南へと流れを変えて太平洋に向かう。
四万十川の流れを変えさせたのは、太古の地殻変動による土地の隆起だった。隆起により川が海に向かう途中に山地が形成され、四万十川は海へと流れていくことができず、西に向かうことになったのだ。

四万十川

もう少し具体的に説明しよう。地球表面を覆うプレートには、大陸を形成する「大陸プレート」と海洋底からなる「海洋プレート」がある。太古の昔、四国沖で大陸プレートの下に海洋プレートがもぐり込み、その際、海底の堆積物が大陸プレートの上に押しつけられ、それが長い年月をかけて隆起となった。この隆起が山地を形成し、四万十川が海に向かう行手をはばみ、流れを変えさせたと考えられている。

四万十川の名前の由来

四万十川

四万十川は、平成6年(1994年)7月に正式に「四万十川」となった。それまでは渡川(わたりがわ)と呼ばれていたが、TV番組で「最後の清流・四万十川」と紹介されたことをきっかけに、地元で通称として呼ばれていた四万十川という呼び方が全国に広がり、やがて正式名称として「四万十川」が採用されることになったとか。
では、なぜ地元の人々に四万十川と呼ばれていたのか。これには諸説ある。

  • ①上流の四万川(しまがわ)から下流の十川(とおかわ)までを結ぶから、四万と十川という字を合わせ、四万十川とした説。
  • ②四万十川は大小あわせるとかなり多くの支流があると言われ、たくさんの川を集める(四万余りの支流を持っている)川として四万十川になったという説。
  • ③アイヌ語のシ・マムタ(とても美しい)が変化したという説。

など、名前の由来ははっきりしていない。

四万十川のアユとアカメ

四万十川

四万十川の天然アユが人気な理由は、川の水質にある。アユの味は育った川によって変わると言われるが、四万十川の天然アユは豊かな川の香りを楽しむことができるという。
四万十川は豊富な降水量に加え、流域の豊かな森林が育んだミネラル分がたっぷりと流れ込んでいる。そのため四万十川のアユは、ミネラル分を含む藻類(コケ)をエサにする。質の良い藻類がある四万十川では、おいしい天然アユが育つというわけだ。

四万十川

また、四万十川河口付近の汽水域には巨大魚「アカメ」が棲息。アカメは日本固有種。主な分布域は西日本の太平洋沿岸だが、その希少性からアカメ釣りができる地域は限られている。ちなみに四万十川ではアカメ釣りが可能。
ただし高知県は、保護の観点からアカメを「高知県の自然を代表する魚種」として「注目種」に指定。四万十川でアカメ釣りをする際は、高知県が提示するルールを守って行いたいものだ。

【参考】
四万十川自然再生事業、公益財団法人 四万十川財団、四万十川の流路変化と興津隆起体の形成、流域圏学会誌「四国流域における広域の文化的景観の捉え方」、高知県、四万十市観光協会、幡多広域観光協議会、四国西予ジオパーク
Infographics by HIROKI MASUDA © GLOBERIDE