(1)こんな雲を見かけたら要注意(山・川・海共通)
前回のテーマでお伝えしたように、積乱雲は雷雲とも呼ばれ、土砂降りの雨を降らせたり雷や突風を引き起こしたりすることがある危険な雲です。
いつどこで積乱雲が発生するかピンポイントで予測するのは難しいですが、天気の急変を知ることができる雲があります。
そのひとつが頭巾雲。成長中の雄大積雲のてっぺんに現れ、積乱雲にまで発達しそうな雲です。それからかなとこ雲。積乱雲が限界まで発達すると、雲は行き場を失い頂上付近が左右に広がるようになります。また、空に広がる雲の底にコブのような雲が現れた時も要注意。乳房雲という雲で、積乱雲が進む方向に現れることがあります。
かなとこ雲
乳房雲
頭巾雲
(写真の出典:『すごすぎる天気の図鑑』(荒木健太郎/KADOKAWA)
また雷の音が聞こえてくる、急に冷たい風が吹く、空が真っ暗になる、という変化も積乱雲が近づいているサインです。
出典:気象庁ホームページ/急な大雨や雷・竜巻から身を守るために「積乱雲が近づくサイン」
このような雲が見られたり現象が現れたりしたら、まずはレーダーで積乱雲の位置や動く方向を確認し、積乱雲がやってくる前に頑丈な建物に入ることが大切です。レジャーを始める前にあらかじめ頑丈な建物の場所を確認しておいてくださいね。
(2)川では急な増水に注意
釣りをしている際に怖いのが、上流での天気の急変です。今自分が遊んでいる場所では晴れて雨が降っていない場合でも、上流で激しい雨が降ると自分のいる下流でも急に増水することがあります。
ですから釣りをしている最中でも、上流の空模様の変化には気を配ることが大切です。川の上流の空に黒い雲や積乱雲が見えたときのほか、急に川の水が濁ったり、落ち葉や流木、ゴミが流れてきたりしたときは要注意。少しでも異変を感じたらすぐに川から離れましょう。
Infographics by HIROKI MASUDA © GLOBERIDE
(3)見た目が穏やかでも怖い波って?
海のレジャーでも注意点があります。それは“土用波”です。
土用波とは、遠くの台風などから伝わってきたうねりのことで、高波に対する注意を促すもの。台風が数千キロと遠く離れていても、上陸する数日前でも台風からのうねりが日本沿岸まで届き、思いがけず高波の被害に遭うおそれがあり注意が必要です。
左:沿岸波浪図、右:地上天気図(平成23年8月28日09時)
関東地方以西の太平洋沿岸では台風第12号からのうねりで波高が3m以上に。
出典:気象庁ホームページ/台風について「台風に伴う高波」
空は晴れて風は穏やかでもうねりは届きますので、海水浴をする人や、釣りをする人がこの波にさらわれる事故が起こりやすくなります。
土用波は、見た目には丸みがあり穏やかにみえるのですが、水深の浅い海岸の防波堤や浜辺などで波が高くなりやすい性質があります。このため沖合からきたうねりが海岸付近で急激に高波になることも。天気予報で「うねりを伴う」という予報が出ていたら要注意です。
出典:気象庁ホームページ/波浪の知識「風浪とうねり」を加工・作成
ついついレジャーに夢中になってしまいがちですが、自然豊かな川や海は危険とは常に隣り合わせ。危険な目に遭うことがないよう、感天望気を身につけてくださいね!
「感天望気」とは・・・
空や雲を見て天気の変化を予想することを一般的に「観天望気」と呼びます。その「観天望気」の一歩先に進んだものとして、気象庁気象研究所で雲を研究する荒木健太郎さんが提案しているのが「感天望気」。雲や空を感じながら上手に付き合い、楽しみながら天気を予想しようというものです。空や雲が教えてくれることは、私たちが思っている以上にたくさんあるのです。
Column釣りと天気「カーボンロッドと雷」
カーボン繊維(炭素繊維)を編み込んだカーボンロッドは、現在のフィッシングシーンにおいて主流となっているロッドの種類だ。軽量で丈夫、高感度という特徴を持ち、釣り人からの信頼は高い。ただしカーボン繊維は電気を通しやすい性質があり、雷を伴う天候の時は注意が必要。雷は高く突き出たところに落ちることが多いので、雷が近づいてきたらカーボンロッドを立てる行為は避けたい。避雷針代わりになって、雷がロッドに落ちる可能性があるからだ。落雷とまではいかなくても、思わず感電する危険性も。とにかく雷が近づいてきたら、カーボンロッドには触れないようにしたい。もちろん素材を問わず、雷の気配を感じたら、釣り竿はすぐに片付けるようにしたい。
ちなみに雷は、雲の中にできた氷の粒がぶつかり合うことで静電気が発生し、そのたまった静電気が放電することで発生する。雷は電気だ。カーボンロッドが電気を通しやすい特徴があることをきちんと理解して安全に釣りを楽しみたい。
参考:気象庁ホームページ、炭素繊維協会ホームページ、など
太田絢子さん(気象予報士/防災士)
中学生のころから気象に興味をもち、大学在学中に気象予報士試験に合格。卒業後は損害保険会社に就職し、交通事故や自然災害に遭った人へのサービス業務に従事。自然災害が多発するなかで、災害の被害に遭う人をゼロにしたいと思うようになり、気象キャスターへ転身。2019年4月からは地元の東海地方で活動中。