(1)サクラの開花 誰がどうやって決めている?
寒い冬を乗り越えて春にサクラが満開になると、なんだかほっとしますよね。テレビなどで「今日、東京でサクラが開花しました」というニュースを聞いたことがあるかもしれませんが、誰がどこのサクラを基準に発表しているのでしょう?
実は全国各地にある気象台またはその近隣には標本木と呼ばれる一本のサクラの木があり、この標本木で5~6輪以上の花が開いた状態となった最初の日を気象台は開花日として観測しています。
一般的には暖かい地域から咲き始め、沖縄地方・奄美地方では1月中旬頃、九州~関東地方は3月下旬、4月下旬~5月になるとようやく北海道でも開花します。
イラスト出典:気象庁
(2)サクラの開花 どうやって予想する?
民間の気象会社では毎年サクラの開花日を予想しているのですが、一体どのように予想しているのでしょうか。
成長して花になる芽は、気温の高い夏にすでに作られます。秋になり冬に向けて気温が下がると一旦休眠しますが、何度か寒さにさらされることで目が覚めるようなイメージで成長を再開するのです。これを休眠打破といいます。その後春に向けて暖かくなるのに合わせて急速に成長し、開花します。サクラの花が開くには暖かい日が続いた方が良いイメージがあるかもしれませんが、冬の寒さと春の暖かさ、その両方が必要になるのです。
民間の気象会社はこの仕組みを利用して、冬や春の気温の予想をもとにサクラの開花日を予想します。
イラスト出典:weather map
(3)開花が年々、早まっているって本当?今後どうなる?
かつては4月の入学式でサクラを背景に記念撮影をしていましたが、近年それが変わろうとしています。というのも、サクラの開花が明らかに早まっているのです。
例えば東京のサクラの開花日は、1971年までの10年間平均は3月31日でしたが、2021年までの10年間平均は3月20日です。つまり、50年で約10日も早まっていることになります。
今後も同じペースで開花日が早まるとすると、50年後には3月10日ごろがサクラの開花時期となり、入学式ではなく卒業式とサクラの組み合わせが一般的になるかもしれません。この理由として、地球温暖化によってサクラの開花に影響を与える春先の気温が高くなっていることが一因と考えられています。
次の春は近所のサクラがいつもの年と比べてどのくらい早く、または遅く開花するのか、ぜひ注目してみてくださいね。
Column釣りと天気「サクラが咲いても海は冷たい!?」
サクラが咲き始めると、いよいよ春。寒い冬には釣りに行くことを控えていた人も、気温の上昇とともに心もウキウキ。海や川に釣りに出かける人も多いでしょう。注意しておきたいのは海水の温度。気温が上昇したから海水温もすぐに上がる、というわけではないのです。海水温の上昇には時間がかかります。海水は気温に比べて温まりにくいのです。その代わり、一度温まると冷めにくいという面もあります。秋が深まる10月になっても、まだ海水が温かいと感じることがあるのは、ゆっくりと温度が上下する海水温の影響もあるのです。さて、季節は春。心待ちにしたサクラが咲き、陸上では春を感じるようになっても、海の中にはまだ春が訪れていない可能性も。海水温が上がってくるのは少し先(おおよそ1ヶ月程度遅れ)と思っていた方がいいでしょう(地域や条件によって違いはあります)。海に本当の春が訪れるのは4月後半ごろ。5月のゴールデンウイークあたりには海水温もあがり、本格的な釣りシーズンを迎えることになるのです。
参考:気象庁「日本近海の海面水温」など
太田絢子さん(気象予報士/防災士)
中学生のころから気象に興味をもち、大学在学中に気象予報士試験に合格。卒業後は損害保険会社に就職し、交通事故や自然災害に遭った人へのサービス業務に従事。自然災害が多発するなかで、災害の被害に遭う人をゼロにしたいと思うようになり、気象キャスターへ転身。2019年4月からは地元の東海地方で活動中。